3月中旬、大学時代の仲間4人で訪れることにしました。 |
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東京駅11:52発の上越新幹線たにがわ411号に乗り、高崎で信越線に乗り換えて横川に着いたのが13:40。
かつて横川駅は、急勾配の碓氷峠を越えるために二重連の電気機関車を連結する重要な駅でした。列車が到着するたびに名物「峠の釜めし」を売り買いする人で大そうな賑わいでしたが、長野新幹線の開業とともにローカル線の静かな終着駅となりました。 |
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駅前には、予め到着時間を告げておいたので宿のマイクロバスが迎えに来てくれていました。
運転手は宿の三代目ご当主。お腰は少々曲がっていますが動きは機敏です。
途中、坂本宿の「霧積温泉連絡所」で郵便物を受け取るために停車。客の送迎ついでに用事も済ませるわけです。 |
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霧積ダムを過ぎたあたりで携帯電話の電波は途絶え、舗装はされているものの、時折設置されている待避所以外ではすれ違いもできない細い山道を登っていきます。 |
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細い山道を登ること30分、県道終点の「きりづみ館」に到着。
この宿は金湯館のご主人のお兄さんが経営しているとか。さきほど連絡所で受け取った郵便物の中にこちらの宿の物もあったのでしょう。届けに行ってあげるために一時停車。
きりづみ館には20年近く前に泊まったことがあります。六角形の美しい風呂を持つ静かな宿です。 |
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県道終点からガードレールもない九十九折の細い急坂を進むこと10数分。ようやく金湯館に到着しました。
右の写真に写っている建物は我々が泊まる新館です。 |
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こちらが玄関のある母屋。
明治16年に建てられたという
味わいのある建物です。 |
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宿の「ライ」ちゃん。
一見優しげな顔をしていますが、実は熊をも追いかけるという勇猛な犬だそうで、撫でようとしたら「う〜っ」と怒られました。 |
金湯館は「日本秘湯を守る会」の会員宿。
「えっ?ここが秘湯??」
と思ってしまう会員宿も結構ありますが、
ここ金湯館は正真正銘、秘湯の宿です。 |
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母さん 僕のあの帽子 どうしたでせうね
ええ 夏碓氷から霧積へ行く道で
渓谷へ落とした あの麦わら帽子ですよ |
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霧積を舞台にした、西条八十の『帽子』の詩の一節が暖簾になっています。 |
森村誠一は学生時代に金湯館に宿泊し、宿の弁当の包み紙に印刷されていたこの詩を目にし、それがのちに『人間の証明』を生み出すきっかけとなったそうです。
"Mama, do you remember the old straw hat ・・・"という主題歌と、麦わら帽子が空を舞うシーンが懐かしく思い出されます。 |
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←伊藤博文らが滞在して大日本国憲法の
草案を練ったという部屋。
仲間の一人が「博文」という名前で、別の仲間が案内してくれた女将さんに「ここにも博文がいるんですよ」と言ったら、わかったのかわからないのか「それはよかったわあ」とかわされました(笑) |
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ここが今回我々が通された部屋。宿泊客が少なかったせいか、201・202の2部屋をぶち抜きにして贅沢に使わせてもらいました。 |
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浴衣に着替えてさっそく風呂へ |
内湯が男女ひとつずつあります。 |
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7、8人も入ればいっぱいでしょうか。
さほど広くない湯舟ですが、
湯量からするとベストの大きさなのでしょう。
透明な湯がもったいないと思うほど
バンバンかけ流されています。 |
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コップが置いてあるので
飲んでみました。
かすかな渋みと甘味のある
わりと飲みやすいお湯です。 |
湯はさらさらとした肌触り。
40℃という温めの湯なので
長湯ができます。
炭酸成分があるので
浸かっていると体中に泡が付着し、
新鮮な湯であることを実感します。 |
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自然湧出の透き通った新鮮なぬる湯・・・本当に気持ちが良くて何度も入りました。 |
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湯上りの一杯(酒宴?)のあと、夕食までの
酔い覚ましに宿の周りをちょっと散策。 |
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雪が全くありませんが、この時期にしては珍しいそうです。
それでも水車を回すための樋から漏れた水が凍って氷柱になっています(上の写真)。
宿のご主人がいけすで魚を取っていました。夕食のおかずに出るのでしょうか。 |
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玄関脇には明治30年頃に湯治に訪れた勝海舟の筆による石碑とその解説、左手には西条八十の『帽子』と森村誠一が『人間の証明』を書くに至った経緯が紹介されています。 |
ここをクリックしてください |
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食 事 |
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【夕食】 |
山菜と野菜の天ぷら、マスの塩焼き、
刺身こんにゃく、わらびのおひたし、
高野豆腐の煮付け、漬物
さらに椀物として豚汁か鯉こくのいずれか
ひとつを選べます。
これがものすごい量で、もう満腹でした。 |
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山の宿に来て色の変わったマグロの刺身を出されるほど悲しいことはありません。この宿の食事はシンプルではありますが好感が持てます。 |
【朝食】 |
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これぞ正統派。清く正しい旅館の朝食という感じです。手前左の茶色い器に入っているのは温泉たまごです。 |
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「秘湯」の定義はというと、どうも答えはひとつではないようで「何時間も歩かないとたどり着けない温泉」とか、単に「山の中の一軒宿」、中には「人に自慢はしたいが教えたくないところ」などというのもあります。何時間も山歩きをする体力を持たない私にとってはこの金湯館はかろうじて車で行ける限界の温泉宿。ここが秘湯でないならば私は一生秘湯を味わうことなく終わってしまうでしょう。
若者を中心とする温泉ブーム(それはそれで悪いことだとは思いませんが)で休日ともなると人がどっと押し寄せ、「秘湯でなくなってしまった秘湯」もあるようですが、部屋にトイレがなくたって構いません、ご主人が愛想笑いできなくたって問題ありませんから、霧積温泉金湯館がいつまでもこのままの姿でいてくれればと思います。 |
【また行ってみたい度】 →こちらをお読みください |
やなぎ夫: |
★★★☆☆ |
やなぎ妻: |
未宿泊 |
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2006年3月11日 |
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