加賀井温泉は以前から是非訪れたいと思っており、温泉情報誌やテレビもしっかりチェックしていました。 もちろん、「頑固親父」と親しまれているご主人についても。今回は私と同じ視点で加賀井温泉を味わっていただくために、先ずは2005年2月放送の『人生の楽園』(テレビ朝日)で仕入れた情報の一部をお読みください。 |
加賀井温泉一陽館はご主人のお父さんが昭和5年に開業。ご長男が跡を継いでいたが、高齢を理由に引退の話が持ち上がる。東京水産大学の教授を務めていたご主人は定年後は奥様と旅行などしてのんびり過ごそうと考えておられたのだが、結局平成10年に定年退職すると跡を継ぐことに。温泉の経営は大変な重労働で、毎日閉店後は堆積した湯の花でお客さんが怪我をしないようにと浴槽の掃除を欠かさず、高濃度のためすぐに詰まる排水溝の湯の花の除去も大仕事。「温泉マニアがやたら来るような温泉施設ではなく、足が痛いのが治った、腰が痛いのが治ったと一人でも言ってくれればそれでいい」という思いで経営しておられ、 入浴料金300円は絶対に値上げしたくないと言う。初めて訪れた客には必ず温泉の説明と入浴の仕方の指南をし、常連客からは「頑固親父」と慕われている。そんなご主人の夢は、将来的にはまた自炊できる温泉旅館として復活することだという。 |
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【一陽館 入湯レポート】 *温泉情報はこのページのおわりにあります。 |
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父が川中島の出身で松代には親戚もおり、多少の土地勘はあったのですが、すんなりとはたどり着けず、途中道を尋ねながらようやく到着。
「加賀井」というのはこの地区の古くからの地名で、他の施設が「松代温泉」を名乗る中、ここ一陽館だけが「加賀井温泉」の名を守っています。 |
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現在は使われていない宿泊棟。
風情のある立派な建物です。 |
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受付けに行くと「はい、いらっしゃい」とご主人。テレビで拝見していたので初めてという感じがしません。料金300円を払うと、「初めてだね。これから温泉の説明をするからいらっしゃい」とどんどん先を歩き出します。
ご主人: どこからお出でになったね?
やなぎ: 千葉からです。ここのお湯はすばらしいと聞いたもので。
ご主人: すばらしい、か。うちの温泉は温泉マニアが面白半分で入るようなところでないの。
シャワーもないし、石鹸も使えないし、それを承知してくれますね。
やなぎ: は、はい。(う〜ん、聞きしに勝る頑固親父・・・(汗)) |
浴舎の脇にある源泉槽の木蓋を開けて中を覗かせてくれました。
お湯は無色透明。ものすごい湯量でゴボゴボと泡立っています。湧出量毎分400リットル。
顔を近づけてみろと言うのでそうしてみると、鼻を刺すような臭い。炭酸ガスだそうです。
手を入れてみろというのでそうしてみると、意外と温め。この温度だからこそ、長湯ができて温泉効果が高まるのだそうです。
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濡れた手をタオルで拭こうとすると、「拭くんじゃない。舐めてごらんなさい」とご主人。舐めてみると塩気と鉄分を含んだソーダ水のようななんとも表現仕様のない味。「鉄分もあるようですね」と感想を言ったのが悪かった。
ご主人: わかったふうなことを言うんじゃないの。この温泉は石灰分が多いの。
やなぎ: ・・・(涙) |
来てみなさいと見せてくれたのがこれ→ |
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お湯を通すパイプの継ぎ目からお湯が滴って、蜂の巣状の鍾乳石になっている。取り除いてもじきにまたできるそうです。
測定してもらったところ、家庭用の風呂に入浴剤を90袋入れたくらいの濃度があるお湯だと説明してくれました。
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ご主人: ○○とかいう温泉教授が2000湯入ったなんて自慢しているけど、温泉というのは自分の体に合ったお湯に時間をかけてじっくり入らないと効果がない。温泉マニアとかいって、4箇所も5箇所も温泉をはしごする人がいるけど、そういう人には300円返して帰ってもらうの。第一、うちのお湯は石灰分が強いから、そのあとで志賀方面の酸性の強いお湯に入ったりしたら、皮膚が黒くなっちゃくから。
やなぎ: ・・・ (う〜ん、完全に「温泉マニア」にされている。まあ、ハズレてはいないけど)
※ちなみに上の2枚の写真はご主人の説明が終わってからそっと撮影したもの。説明を聞きながらカメラを出したりしたらそれこそ怒鳴られそうでしたから(笑) |
ご主人: まあ、いろいろ言ったけれど、ゆっくりしていってください。露天風呂に入るには内湯で脱衣してからここ(写真→)を裸で歩いていかないといけないけど、皆さん平気でそうしてるから。
と、ようやく「頑固親父」さんのご指南から解放されました。歯に衣着せぬ物言いにたじたじでしたが、温泉に対する愛情と信念が感じられて嫌な感じはしませんでした(などと言ったら「わかったふうなことを言うんじゃない」とまた怒られそうです)。 |
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風格のある堂々とした浴舎です。 |
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脱衣所は入口を入ったところの他に浴室内にもあります。
時間帯によってはかなりの入浴者があるのでしょう。脱衣かごが沢山あります。 |
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天井の湯気出し |
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湯舟はかなりの広さ。茶褐色の湯がかけ流されています。そういえば、テレビで放送された折、閉店後の清掃前に準備運動だといってご主人が泳いでいました。仕切りの向こうが女湯です。 |
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注ぎ口の湯は無色透明。空気に触れると茶褐色になっていきます。温泉成分が堆積してまるで渓谷のようです。 |
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温泉成分が付着してこんな状態になっていますが、よく見ると例の黄色いケロリン桶です。 |
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壁に貼られた泉質表示を見ると、泉質は「ナトリウム・カルシウム-塩化物泉」。「含鉄」の部分が白ペンキで消されています。先ほど「鉄分もあるようですね」と言ったら叱られましたが、ご主人は「鉄」がお嫌いのようです。
ちなみに温泉地名も「松代」が消されて「加賀井」と書き改められています。う〜ん、やっぱり頑固(笑)!
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泉温は41℃。成分の濃さの割に意外なほどいい肌触りで、浴場の落ち着いた風情も手伝っていつまででも入っていたい感じです。 |
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露天風呂は混浴。源泉の異なる2つの浴槽があります。
向かって左は茶褐色を通り越してオレンジ色のお湯でかなり温め。右側の浴槽(女性もいらっしゃったので撮影は遠慮しました)は内湯と同じ源泉をブレンドしたもので左側に比べると少し高めの湯温になっています。どちらも新鮮な湯がバンバンかけ流されていて炭酸の泡がプチプチしているのも観測できます。
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タオルもオレンジ色に染まります。 |
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内湯に入り、露天風呂に入り、そしてまた内湯に入り・・・あまりの心地よさに結局1時間半近くお湯に浸かっていました。
私は腰痛持ちで、ロングドライブのあとなど腰が重くなるのですが、腰といわず体全体が軽くなったのは気のせいばかりではないでしょう。 |
帰りがけに受付けの奥にご主人の姿が見えたので会釈すると、表に出てきて「どうだった?」と尋ねられました。へたな形容抜きで「気持ちよかったです」と答えると、「それはよかった」とにっこり。「これからどこかに寄るの?」との問いかけに「せっかくここまで来たのだから久しぶりに善光寺にお参りしようと思って」と言うと、わざわざ地図を持ってきてわかりやすくて混まない道を教えてくださいました。二度目からはご主人の「前説」がないのが残念ですが、是非また入りに行きたいと思います。 |
【また行ってみたい度】 →こちらをお読みください |
やなぎ夫: |
★★★★★ |
やなぎ妻: |
未入湯 |
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2006年5月15日 |
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