上田市街から国道143号線を走ること30分、青木交差点の一つ先を斜め左に入ります。小さな看板があるだけでわかりづらいので要注意。村営施設「くつろぎの湯」が目印です。
細いなだらかな坂道を上っていくと、バス回しの広いスペース(写真右)があり、その先が田沢の温泉街。両側に格子戸を持つ宿が数件並ぶ、石畳の細い坂道。江戸時代にタイムスリップしたような風情に、一瞬車両通行止めかと躊躇しましたが、先の方に車が見えたので恐る恐る進みました。 |
|
|
目的地である共同浴場の有乳湯の前には3、4台程の駐車スペースがありました。 |
「有乳湯(うちゆ)」という名前からも子宝の湯であることが想像できますが、その昔、山姥がこの湯に浸かり、金太郎こと坂田金時を身ごもったという伝説も残っています。 |
入母屋と唐破風を持つ湯屋は2000年に建て替えられたもので、入口右手前にはテラスがあり、その下には足湯もあります。
料金は200円。入口の券売機で券を買い、受付けで渡すというシステムです。 |
|
|
|
月曜日の昼過ぎとあって、入浴客は地元のお年寄りと私の二人だけ。温泉の話を伺いながら田沢の湯をのんびりと味わいました。 |
|
浴室に入ってすぐのところにある小さな浴槽はかけ湯で、昔の源泉(1号泉)で薄緑色をしています。泉温は人肌より若干温め、35℃くらいでしょうか。 |
|
|
|
湯舟は14〜15人くらいは入れる大きさで、かけ湯と違って青味がかったお湯。はじめはタイルの色かと思いましたが、お湯の色のようです。
深度300mの掘削自噴の2号泉で、泉温は1号泉より高めの39.8℃。
泉質は単純硫黄泉。硫黄香のする新鮮なお湯がバンバンかけ流されています。 |
|
|
泉温は40℃に満たないのですが、体感温度はもっと高く感じられます。その理由は田沢温泉の特徴である泡にあるのです。湯に浸かっていると体中に細かな泡が付着し、それが保温効果を高めて実際よりも高い温度に感じるようです。 |
|
|
|
芯から温まる感じで、それほど長く入っていないうちから体中がぽかぽかしてきました。そしてツルスベ感と硫黄の香り・・・聞きしに勝る名湯です。
洗い場の蛇口とシャワーから出るのも温泉で、贅沢の極み。ただし、石鹸やシャンプーはなく、皆さん持参してきます。 |
|
|
|
帰りがけ、管理人さんにも話を伺いました。飲泉すると胃腸や肝臓に効き、管理人さんはご飯を炊くときにも使っているそうです。持って帰って飲んで下さいと、ペットボトルを下さいました。
左の写真はテラスの下にある捨て湯の配管。ここで温泉を汲みます。もったいなくも有り余る湯を流していて、千葉まで引いていきたいと言ったら、「ぜひまたお出でください」と笑っておられました。 |
|
私の愛読書でいつも旅行カバンに忍ばせている池内紀氏の『温泉旅日記』の最終項に、田沢温泉が登場します。池内さんは田沢温泉を「遠からずわが「終の栖(ついのすみか)」となるはずのところである」と書いています。なんでも「終の栖」用に考えている条件を、田沢温泉はぴったり満たしているとか。その条件とは・・・
一、共同湯があって、いつでも入れる。
一、湯量が豊富でドンドン湯舟にあふれている。
一、近くに渓流があって、たえず水音がひびいている。
一、山を背にしていて東にひらけている。
一、バスの便で町へ出られる適度の遠さ。
今回、初めて(実家の父に話したら「小さい頃に連れて行ったじゃないか」と言われましたが)田沢温泉を訪れて、池内さんの気持ちがよ〜くわかりました。次はぜひ泊まりで行ってみたい温泉です。 |
2008年8月、妻と再訪。お湯の素晴らしさにやなぎ妻も感激。 |
|
【また行ってみたい度】 →こちらをお読みください |
やなぎ夫: |
★★★★★ |
やなぎ妻: |
★★★★★ |
|
2006年10月30日 |
|