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湯平の温泉街は花合野川(かごのがわ)に沿って細長くのびていて、石畳の坂道が延々500mにわたって続いています。この石畳が作られたのは江戸時代の享保年間(1716〜1735)だそうで、300年前の人びとと同じ石畳を歩いているのかと思うと不思議な気分です。道幅は狭く、車一台通るのがやっとです。といっても車両通行止めではないようです。 |
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湯平温泉は、今は亡き渥美清さん主演の映画「男はつらいよ」第30作『花も嵐も寅次郎』のロケ地でした。マドンナは田中裕子さん、ゲスト出演は沢田研二さん。寅さんによって結ばれた二人は、このあと本当に結婚してしまいましたね。 |
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寅さんの舞台として、山田洋次監督は日本の原風景が残る場所にこだわったそうですが、この石畳の温泉街を見た時には「ここだ」と膝を叩いたことでしょう。 |
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酒と放浪を愛した俳人、種田山頭火は昭和5年11月にここ湯平温泉を訪れています。 |
湯平温泉が大そう気に入ったようで、『行乞記』の中で「ここ湯平といふところは気にいった。いかにも山の湯の町らしい。石だたみ、宿屋、万屋、湯坪、料理屋等々々、おもしろいね・・・・・此の温泉はほんたうに気に入った。山もよく水もよい、湯は勿論よい、宿もよい、といふ訳で、よく飲んで、よく食べて、よく寝た。ほんたうによい一夜だった」と記しています。
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山頭火の滞在を記念して建てられました。「時雨館」の名は次の句にちなんだものです。 |
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昭和5年11月11日晴、時雨、初霰。山峡は早く暮れ遅く明ける、9時より11時まで行乞(ぎょうこつ)・・・午後は休養、流れに入って洗濯する、そしてそれを河原に干す、それまでは良かったが日和癖でざっと時雨てきた。私は読書していて、何も知らなかった(谿声がさらさらと響くので)宿の娘さんがそこまで走って行って持って帰って下さったのはじっさい有難かった、今夜は飲まなかった財政難もあるけど飲まないでも寝られる程、気持が良かったので良く寝た。(それでも夢を見ることは忘れなかった) |
時雨るるや人の情けに涙ぐむ |
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無人のミュージアムで入口の箱に維持のため100円を入れます。6畳一間と階段の壁に山頭火にちなんだ書などが
展示されています。外観の雰囲気はよいのですが、内容はもうひと工夫できないものでしょうか。ちょっと期待外れ。 |
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ちなみに山頭火の句では「つかれもなやみもあつい湯にずんぶり」というのが好きです。 |
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石畳の坂道の一角に地元の小学生が作った切り絵と俳句を飾ったコーナーがありました。「カランコロン雨の湯平石畳」「湯平の柚温泉はぽっかぽか」・・・どれも微笑ましい作品です。
それにしても静かな温泉街。訪れたのは午前11時半だったのでチェックアウトを済ませたお客さんたちが帰ったあとなのでしょうが、人影はまばら。実はこのあと車で15分のところにあるお隣由布院温泉に行ったのですが、3連休の中日ということもあって大変な人出だったので、一層湯平の静かさが際立ってしまいました。 |
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それでもここ数年徐々に客足が伸びて活気を取り戻しつつあるようです。雰囲気が台無しになるような騒々しい街になっても困りますが、もっと多くの人に歩いてもらいたい湯の街です。注文をつけると、訪れる人のためにちゃんとした標識や案内図がほしいのもです。駐車場もわかりづらかったです。雰囲気を壊さない(逆に引き立てる)デザインの標識をぜひお願いします。 |