ばらと温泉と日本酒ラベル/温泉の巻 
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家族風呂って風紀乱す?

 2006年11月19日付けの朝日新聞に『家族風呂って風紀乱す?』と題する記事があった。
兵庫県内の公衆浴場でのごたごたが発端の記事なので少々説明を加えておく。
 2006年8月、兵庫県小野市の公衆浴場「白雲谷温泉ゆぴか」が家族風呂の営業許可申請
を県に提出したところ、条例違反とされた。兵庫県公衆浴場基準条例は6歳以上の男女の
混浴を禁じている。小野市は同県三木市の公衆浴場「吉川温泉よかたん」の家族風呂は認
められているではないかと反論。兵庫県は「よかたん」の家族風呂も混浴にあたるとして使
用禁止を指導。さらには城崎温泉の外湯で「家族湯」を備えている2カ所も指導を受け、混
浴となる家族での使用を禁じる「ただし書き」を掲示するなど波紋が広がっている。
 
 朝日新聞社が47都道府県にアンケートしたところ、公衆浴場の家族風呂を認めていない
と回答したのは12都府県(茨城、東京、新潟、山梨、福井、長野、愛知、三重、京都、兵庫、
徳島、宮崎)。他の35道府県は例外規定を設けるなどして家族風呂を認めている。また家族
風呂以外に混浴を認める規定は、水着等着用が5割、介助目的が4割の自治体にあったが、
何もないところも3割あったという。
 
 兵庫県生活衛生課によると「(家族風呂は)利用者が本当に家族か確認は難しく、風紀を
乱す恐れがある」という。開業以来、家族風呂を営業しながら突然とばっちりを受けた形の
「吉川温泉よかたん」は、やむなく男女2人の利用者には免許証などの提示を求めて夫婦で
あることを確認し始めたそうだ。
 
 愛媛県が定めた塩素消毒条令で、かの道後温泉本館にも塩素が投入され、多くの温泉フ
ァンを嘆かせてまだ間もないが、またしてもお役所の頭の固さ、融通のなさにはうんざりする。
私自身は旅館の貸し切り風呂は別として、公衆浴場の家族風呂を利用したことはないのだが、
今までに「風紀が乱れる」ような利用のされ方があったのだろうか。「高齢者には家族風呂が
安心」、「(家族風呂なら気兼ねなく入れる)いろいろな障害を背負って生きている人たちから
楽しみを奪う自治体があるなんて不愉快」(いずれも新聞記事より抜粋)といった市民の声が聞こ
えないのだろうか。

 行政側のこうした事なかれ主義的な規制はマスコミ、特にテレビ局の報道の仕方にも問題
があると思う。ひと度ターゲットを絞るとこれでもかと言わんばかりに集中砲火を浴びせる。
特に公(おおやけ)批判は大衆受けするから攻撃は執拗に繰り返される(現在のいじめや自殺
問題での教育委員会や学校への批判報道がいい例だ)。「こうなる前になぜ手を打たなかっ
たのか」と攻撃される前に、行政側は要らぬ規制をすることになる。これはマスコミだけが悪
いのではなく、何かにつけて「責任、責任」と、ひとところに責任を押しつけなければ気が済ま
ない今の日本社会全体に、それこそ「責任」があるように思えてならない。昔の日本はもっと
優しかった・・・と思うのは私だけだろうか。
 
 話が脇道に逸れてしまったが、「(家族風呂は)不特定多数の入浴ではなく、混浴の概念か
ら外れる」(香川県)、「アベックが利用しても問題ない」(福岡県)などと人間味のある見解を
示している自治体もあり、一派ひとからげに「役所仕事はけしからん」というのは外れている
だろう。
 
 最後に、温泉評論家、石川理夫氏の意見をそのまま引用し、かつ全面的に賛成してこの項
を締めたいと思う。
「見知った人間が合意して入るのに、どうして風紀が乱れるのか。あまりにしゃくし定規な判
断。行政には公共の場を管理する義務があるかもしれないが、家族風呂内でのプライベート
にまで立ち入るべきではない。」